ランディの偉業達成後、世界中で記録更新を狙う過激な挑戦者が相次いだ。しかし、記録管理団体であるギネスワールドレコーズは1989年、重大な決断を下す。「睡眠剥奪を伴うすべての記録更新を即座に禁止し、公式ガイドラインから排除する」という宣言だ。
撤廃の最大の理由は、安全性の担保が不可能である点にある。過度な徹夜は、脳卒中や心筋梗塞、重度の不眠症を誘発する致命的な危険を孕む。挑戦者が意識を失わずに起きているかを24時間監視し続ける判定プロセス自体が、人間に対する非倫理的な拷問に他ならないと批判されたのだ。
さらに、医学的アプローチの進歩によって「目を開けたまま脳の一部だけが眠る」マイクロスリープ現象の存在が明らかになった。完全に起きている状態と睡眠状態の境界線が極めて曖昧であり、客観的な記録判定が不可能であるという科学的な限界も、公式撤廃を後押しした。