積極奇異型という概念は、イギリスの児童精神科医ローナ・ウィングが自閉症スペクトラムを提唱した際、社会性の障害パターンを「孤立型」「受動型」「積極奇異型」の3つに分類したことに端を発します。従来の「自閉症=自室に引きこもり他者と関わろうとしない」という固定観念を覆すこのタイプは、むしろ他者との接触に極めて意欲的です。
それにもかかわらず、学校や職場で「うざい」「距離感がバグっている」と敬遠されてしまう最大の原因は、人間関係の文脈(コンテクスト)を把握する「心の理論」の働きに偏りがある点にあります。定型発達の人々が無意識に行っている「相手の表情の変化」「声のトーン」「会話の持ち時間のバランス」といった非言語的な合図を読み取ることが極めて苦手なため、自分の興味・関心や思考の奔流をそのままストレートに相手へぶつけてしまうのです。
かつて積極奇異型アスペルガー症候群と診断されたある30代当事者は、自身の回想録の中で次のように吐露しています。
「自分の中では『好意を持って仲良くなりたい』という純粋な思いしかありませんでした。相手が眉をひそめているのも、時計をチラチラ見ているのも目に入らない。自分が面白いと思う知識を共有すれば相手も絶対に喜ぶはずだと信じ切っていたのです。後から『あの時の態度は失礼だった』と距離を置かれ、なぜ嫌われたのか分からずパニックになりました」
このように、積極奇異型の会話の特徴は双方向のキャッチボールではなく一方的なドッジボールになりがちです。「相手がどう感じるか」という情動的共感が抜け落ちたまま、知的好奇心や親愛の情だけで突進してしまうため、受け手側は「境界線を暴力的に破られた」と感じ、強い防衛本能や嫌悪感を抱くことになります。