映画『ピノキオ』(1940年公開)において、心優しい人形職人ゼペットの工房で暮らしていたフィガロ。金魚のクレオとともに、ゼペットの温かな家庭を彩る欠かせない存在でした。ところが、その後のディズニー短編アニメーションやコミック作品を追うと、フィガロはごく自然にミニーマウスの屋敷で暮らすペットとして描かれるようになります。
ファンデーションの間で「ピノキオとミニー、どちらとの関係が正史なのか」と議論を呼んできたこのフィガロ、ピノキオ、ミニーの関係の真相は、ウォルト・ディズニー本人の偏愛とも呼べる強いこだわりが発端でした。当時の制作記録や関係者の証言によると、ウォルトは『ピノキオ』の制作過程で出来上がってきたフィガロのアニメーション試写を見て、「この愛くるしい子猫を一作限りの脇役で終わらせてはならない」と確信したと伝えられています。
ウォルトはフィガロをスターダムに押し上げるべく、1943年にはスピンオフ短編映画『フィガロとクレオ』を制作。その後、ミッキーマウスの相棒であるミニーマウスに専属の愛猫を与える構想が持ち上がった際、外部の新規キャラクターではなく、すでに完成された個性を誇っていたフィガロを抜擢しました。これが、ミニーのペットになった理由の決定的な史実です。
1946年の短編映画『フィガロの初恋(Bath Day)』では、リボンをつけられてお風呂に入れられるフィガロとミニーの掛け合いがコミカルに描かれ、この共演を機に「ミニーの愛猫フィガロ」という強固なパブリックイメージが世界中に定着していきました。