女性誌の枠組みを大きく超えて社会現象となった最大のきっかけは、2016年に巻き起こった爆発的な「おそ松さんブーム」と『anan』編集部によるエッジの効いた企画力が見事にかみ合った点にあります。ギャグアニメのキャラクターである松野家の6つ子たちが、普段のジャージやパーカー姿を脱ぎ捨て、洗練されたモードファッションやクールなブラックスーツに身を包んだビジュアルの破壊力は、ファンの想像をはるかに凌駕していました。
マガジンハウスが踏み切ったおそ松さん特集に伴うananの重版は、雑誌不況が叫ばれる出版業界において極めて異例の出来事でした。通常、週刊誌や月刊誌などの定期刊行物はタイムリーな情報鮮度を重視するため、増刷のリスクを避けて重版を行わないのが業界の鉄則とされています。しかし、発売日の朝から全国の書店やコンビニエンスストアで売り切れが続出し、入手できなかった読者からの問い合わせや再販要望が殺到した結果、編集部は異例の緊急重版を決断せざるを得ない状況へと追い込まれました。
普段アニメ雑誌を手に取らない層も巻き込み、「ananの表紙や裏表紙を6つ子が飾る」というギャップそのものが強烈なニュースバリューを生み出しました。メディアミックスの枠を超え、サブカルチャーとハイファッションが幸福な融合を果たした瞬間だったと言えます。