怪獣映画やフィクション作品では、「大蛇に呑み込まれた主人公が、胃袋の中で生きておりナイフで腹を切り裂いて脱出する」といった劇的な描写が散見されます。しかし、生物学および法医学の観点から言えば、呑み込まれた人間が生還できる可能性は完全にゼロです。
大蛇は獲物を生きたまま呑み込むことはありません。捕食の第一段階として、逆向きに生えた無数の鋭い牙で獲物に噛みつき、瞬時に全身を何重にも巻き付けます。従来は「息ができなくなる窒息死」と考えられていましたが、近年の動物生理学の研究により、巻き付きによる強力な圧力は血流を即座に遮断し、心停止と脳貧血を引き起こすことが判明しています。獲物は巻き付かれてからわずか数十秒から2〜3分で意識を失い、完全に絶命します。
さらに、蛇の体内には呼吸用の酸素は存在せず、胃に達する前の食道段階で内臓破裂や肋骨骨折が生じるほどの強い筋収縮を受けます。救出作業の映像で犠牲者の遺体が無傷のように見えるケースがあるのは、外皮を食い破る噛み傷ではなく、内圧による圧迫死であり、呑み込まれた直後で胃酸による本格的な溶解が始まる前に発見されたためです。呑まれた時点ですでに命は失われており、胃袋の中での生存劇は完全な創作に過ぎません。