ネット上のファンの間でもたびたび議論の的となるのが、サウンドトラック盤に収録された「movie ver.」と、オリジナルアルバム『人間開花』に収録されたオリジナルバージョン(original ver.)の違いです。一聴しただけでは同じ楽曲に聴こえるかもしれませんが、その意図と設計思想は明確に分かれています。
最大の相違点は「間奏のギターソロ」と「アウトロ(後奏)の構成」です。映画本編で使用された「movie ver.」では、主人公2人が入れ替わり生活に奔走するコミカルかつ怒涛のモンタージュ映像が展開されます。そのため、劇中のモノローグやセリフ、効果音と周波数帯が衝突しないよう、間奏のギターソロがあえて排除され、ミニマルなカッティングリフのみで繋ぐストイックな引き算のミックスが施されました。
一方、アルバム『人間開花』に収録されたバージョンは、映画という制約から解き放たれ、本来の純粋なロックバンド・RADWIMPSとして提示された「完全形」です。間奏には桑原彰による伸びやかでテクニカルなギターソロが鎮座し、エモーショナルなフレーズが炸裂します。さらにアウトロも小節数が増加し、バンドのアンサンブルが極限まで高まりフェードアウト(ないしはカットアウト)していくダイナミックな音場構成となっています。作品への奉仕として削ぎ落とされた劇伴版と、ロックの快楽性を限界まで追求したアルバム版。両者を聴き比べることこそ、彼らの音響美学を享受する醍醐味です。