ドローイングは美術大学の基礎実技にとどまらず、多様な専門領域で中核的な役割を果たしています。
現代アートにおけるドローイングの定義は、20世紀半ば以降に劇的な拡張を遂げました。かつては油彩画や彫刻のための「習作(エスキース)」と見なされていた紙のドローイングが、サイ・トゥオンブリーやキース・ヘリングらの登場を経て、作家の思考の痕跡や身体運動そのものを提示する「完成された作品」として認知されるに至りました。線の太さ、筆圧の強弱、消し跡までもが鑑賞の対象となり、完成図にはない即時性と偶発性が評価されています。
一方、建築ドローイングの描き方においては、極めて工学的かつ詩的なアプローチが求められます。空間の立体構成を把握するためのアクソノメトリック図や断面パース、設計思想をクライアントへ直感的に伝えるダイアグラムなど、線の1本1本に寸法感覚や光の動線が込められます。デジタルBIMが普及した現代でも、多くの著名建築家が初期の構想段階で手描きのドローイングにこだわるのは、思考のスピードと身体性を直結させる唯一の手段だからです。