建築家と伝統工芸士の手によって作り上げられた店内は、日本の伝統建築における「間」の美学がみごとに体現された場所だ。直線と曲線が織りなす空間には、無駄な装飾が一切存在しない。それなのに決していびつな冷たさを感じさせないのは、天然木や和紙、焼き物の質感がじんわりとした温もりを放っているからだろう。
席数をあえて極限まで絞り込むことで、隣客との距離感を絶妙に保ち、個々のプライベートな時間が大切に守られている。窓越しに見える中庭の苔や小さな庭木は、四季の移ろいをそのまま自然の絵画として描き出す。五感すべてで空間を味わう体験は、都市生活で知らず知らずのうちに麻痺していた感覚を優しく呼び覚ましてくれる。