日本中を熱狂の渦に巻き込んだメキシコシティオリンピック 1968。そこで得点王に輝き、日本サッカー界に歴史的な銅メダルをもたらした英雄も、一歩家庭に入れば不器用ながらに家族を深く愛する一人の父親だった。
家の中でも常にサッカー界の中心人物であり続けた父の存在感は、ときに思春期の息子にとって言葉にし難い重圧となったことも事実だ。しかし、父・邦茂氏は自らの栄光を子どもに押し付けることは決してしなかった。ピッチで見せた冷徹なまでの勝負強さの裏で、子どもの自主性を重んじ、選んだ道を黙って見守る懐の深さを持っていたことが、歪みのない信頼関係を育む土台となった。