1921年という年は、日本が近代国家としての爛熟期を迎えつつ、同時に激動の前兆を孕んでいた大正時代史の転換点でした。第一次世界大戦後の好況とデモクラシーの熱気が街を包む一方、国内政治では平民宰相として親しまれた原敬が東京駅で凶刃に倒れ、皇太子裕仁親王(のちの昭和天皇)が摂政に就任した年でもあります。
世界に目を向ければ、軍拡競争に歯止めをかけるワシントン海軍軍縮会議が開幕。文化面ではラジオ放送の前夜、大衆雑誌や洋風建築が都市部を彩り始めました。この年に生まれた方々は、関東大震災、世界恐慌、そして太平洋戦争とその後の復興という、日本の激変を全身で受け止めながら人生の礎を築いてきた世代です。