井上嘉浩の生い立ちを紐解くと、極めて敬虔で生真面目な少年の姿が浮かび上がります。1969年に京都府で生まれた井上は、実直な会社員の父親と教育熱心な母親という、愛情に満ちた中流家庭で育ちました。地元の進学校である私立洛南高等学校に進学した井上は、仏教の精神に触れる環境の中で、思春期特有の「生きる意味」や「魂の救済」について深い思索を巡らせるようになります。
真面目で心優しい性格だった井上嘉浩の家族や両親は、息子の将来を案じつつも温かく見守っていましたが、高校時代に手にしたヨガや密教に関する書籍が大きな転機となりました。その著者のひとりが、当時まだ新興のヨガサークルを率いていた麻原彰晃(本名・松本智津夫)でした。
16歳でオウム真理教の前身組織「オウム神仙の会」に入会した井上は、教団の教義と修行体験に急速にのめり込んでいきます。大学進学後まもなく本格的に出家し、自らの青春と人生のすべてを教団に捧げる決断を下しました。親が涙ながらに連れ戻そうと試みるも、教団の絶対的なマインドコントロールが少年の精神を完全に掌握していました。