吉田沙保里の強さを語る上で、父・栄勝氏の存在を外すことはできない。三重県一志町(現・津市)の自宅に道場を開き、幼少期の沙保里を叩き上げた人物だ。栄勝氏自身もかつてレスリングの全日本選手権で頂点に立った一流のアスリートであり、その勝負根性は娘へ確実に受け継がれた。
母・幸代さんもまた、ただ者ではない。国体出場経験を持つテニス選手として活躍した経歴を持ち、スポーツ選手としての強靭な体躯と精神力を兼ね備えていた。つまり、吉田沙保里は両親ともにトップクラスのアスリートという「サラブレッド」として生を受けたのである。
さらに、3人きょうだいの末っ子として育った沙保里には、2人の兄がいる。長男の勝幸氏、次男の秀和氏もまた、幼少期からレスリングに打ち込み、全国大会で実績を残した実力者だ。家の中には常にマットが敷かれ、兄たちと本気で組み合う日常が存在していた。彼女の爆発的なタックルと高速の反応速度は、男兄弟の中で揉まれて育った環境が生んだ必然の産物といえる。