本作を語る上で欠かせないのが、スクリーン越しに香りが漂ってきそうな絶品料理の数々です。ウズラのロースト、トリュフソースの肉料理、洗練されたデザートなど、料理監修には当時のトップシェフ陣が参加し、プロの厨房の手際と熱気が完全に再現されました。
中でも観客の記憶に強く刻まれているのが、固く心を閉ざしていたゾーイが初めて口にした「サフランソースのスパゲッティ」です。このパスタは、家庭でも驚くほど手軽にそのエッセンスを再現することができます。
【劇中再現パスタ:サフラン香るトマトクリームスパゲッティの基本】
まず、少量のぬるま湯(または白ワイン大さじ1)にサフランのめしべを数本浸し、美しい黄金色と独特のエキゾチックな香りを抽出します。フライパンに良質なオリーブオイルと潰したニンニクを弱火で熱し、香りが立ったらみじん切りの玉ねぎを透き通るまで炒めます。そこにホールトマトを手で潰しながら加え、サフラン抽出液を投入。弱火で10分ほど煮詰めた後、生クリームを回し入れ、塩・黒コショウ、そして隠し味に無塩バターをひとかけ溶かします。アルデンテに茹で上げたスパゲッティを手早く絡め、仕上げに削りたてのパルミジャーノ・レッジャーノと刻んだ生バジルを散らせば完成です。濃厚でありながらサフランの爽やかな芳香が広がるこの一皿は、日常の食卓を一瞬で特別なレストランに変えてくれます。
また、映画の舞台となったロケーションもファンの間で大きな注目を集めました。物語のメイン舞台であるフレンチレストラン「22ブリーカー」は、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジ、ブリーカー・ストリート(Bleecker Street)周辺の雰囲気をベースに設定されています。実際の厨房やダイニングフロアの多くは精巧に組まれたスタジオセットですが、外観や周辺のエクステリアはマンハッタンの歴史あるストリートでロケ撮影が行われました。赤レンガの建物が並ぶ情緒ある街並みは、ケイトの張り詰めた生活と、その後のあたたかな日常のコントラストを見事に際立たせています。