長寿アニメにおいて、象徴的な主役声優の交代は常に巨大なプレッシャーと制作陣の葛藤を伴います。2024年3月4日、まる子の無垢で少しませた声を34年間演じ続けたTARAKOさんが63歳で急逝したという報は、日曜夕方のルーティンを愛する全国の家庭に深い悲しみをもたらしました。フジテレビおよび制作の日本アニメーションは直ちにオーディションを実施。複数に及ぶ実力派声優の中から満場一致で抜擢されたのが、菊池こころさんでした。
菊池さんはこれまでに『BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS-』のうちはサラダ役や『ONE PIECE』のトコ役などを務め、感情の機微を巧みに表現する演技力に定評のあった実力派です。2024年4月21日放送の第1429回「プロ野球開幕!!」の巻で新まる子として初登場を果たした際、SNSや大手掲示板では秒単位でリアルタイム実況が交わされました。
放送当初、ネット上では「少し声が高めで幼い印象を受ける」「どうしてもTARAKOさんのハスキーで脱力感のあるツッコミが脳裏をよぎる」といった長年親しんだ耳ゆえの違和感を吐露する声が散見されました。しかし、登場から数ヶ月が経過する頃には視聴者の空気は一変します。菊池さんが過度に先代の声色を真似るのではなく、まる子特有の「お調子者で怠け者、けれど根底に家族思いの優しさがある」という精神性を丁寧に咀嚼し、声に乗せている姿勢が熱烈な支持を集めたのです。
2026年現在の視聴者アンケートやSNSの反響を精査すると、「もはや全く違和感がなく、むしろ日曜夕方にふさわしい安心感を取り戻した」「昭和の子どものやんちゃさがより生き生きと伝わってくる」と、肯定的な評価が9割以上を占めるに至っています。声優交代という作品存続を揺るがす最大の危機を、菊池こころさんは卓越した職人技と作品への深い敬意によって乗り越えたと言えます。