ペンキ缶の開口部にある円周状の溝は、フタを強固にかみ合わせて密閉するための「チャック構造(天切り溝)」になっています。しかし、この溝は液体を注ぐためのガイドとしては極めて不向きな形状です。そのまま缶を傾けると、液体の表面張力と粘性によって塗料が開口部の縁を伝い、低所である溝へと一気に流れ込みます。
さらに注ぎ終わって缶を起こす瞬間、切れの悪さから「しずく」が外周を伝って缶の側面や床を汚します。こうして溝に溜まった塗料を放置すると、乾燥とともに強力な接着剤へと変化します。これが「次回使おうとしたらフタがビクともしない」「マイナスドライバーでこじ開けたらフタが変形して密閉できなくなった」という失敗を引き起こす物理的メカニズムです。