立花隆の多面性を象徴する出来事として語り継がれているのが、スタジオジブリのアニメーション映画『耳をすませば』での声優出演だ。主人公・月島雫の父親役を演じた彼の声には、頑固でありながら娘を温かく見守る包容力が溢れていた。この配役を打診された背景にも、彼の内に秘められた人間的魅力と温厚な私生活の姿があったとされる。
また、数々の『NHKスペシャル』で宇宙、脳死、癌といった人類の壮大なテーマに挑んだ際も、その語り口の根底には常に「生きている人間への愛おしさ」が漂っていた。冷徹なノンフィクション作家というパブリックイメージの裏側には、常に血の通った温かな人間関係が存在していたのである。