1980年代前半、日本がバブル景気へと向かう熱狂の最中に投じられたのが『ふぞろいの林檎たち』でした。主人公たちは一流大学のエリートではなく、いわゆる「四流大学」に通う劣等感を抱えた若者たち。中井貴一、時任三郎、柳沢慎吾らが演じた不器用な青年たちの姿は、当時のテレビにあふれていたキラキラしたトレンディドラマの対極を行くものでした。
山田太一は執筆当時のインタビューで、「世の中の大部分は、スポットライトの当たらない不揃いな存在。その痛みをなかったことにしてはいけない」と述懐しています。傷つき、見栄を張り、拒絶されながらも懸命に生きる若者たちの姿は、主題歌であるサザンオールスターズの切ないメロディとともに社会現象となりました。
山田太一の台詞が放つ数々の名言は、半世紀近く経った今も人々の胸を打ちます。
「人は分かり合えない。分かり合えないという地点から、必死に言葉を探すことこそが会話なんだ」
「林檎がみんな均一な形をしているはずがない。傷があるからこそ、その味は深い」
安易なポジティブ思考や耳ざわりのいい言葉を拒み、痛みを凝視した上で紡ぎ出される台詞だからこそ、山田太一の残した言葉は消費されず、人生の道標として残り続けています。