屁負比丘尼の真相|江戸の珍職業「おなら身代わり」実在と給料の全貌

屁負比丘尼の真相|江戸の珍職業「おなら身代わり」実在と給料の全貌

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屁負比丘尼をめぐる言説には、センセーショナリズムによる誤解が少なくありません。歴史的事実を検証すると、意外な真実が見えてきます。

誤解1:彼女たちは本物の仏教僧(尼僧)だったのか?

彼女たちが名乗った「比丘尼」という肩書は、必ずしも厳格な戒律を守る出家僧を意味しませんでした。 江戸時代の都市部には、剃髪したり頭巾をかぶったりして尼僧の姿をしつつ、歌を歌って物乞いをする「願人(がんにん)」に近い芸人や、裏長屋で暮らす私度僧の女性たちが多数存在していました。彼女たちは「比丘尼」という世俗から半ば離脱した身分を看板にすることで、町人地の厳しい身分規制をすり抜け、自由な派遣稼業を営んでいたのです。 比丘尼という「世俗を捨てた身」だからこそ、人前で屁をこいたと名乗り出ても、世間から「尼法師の浅ましい所業」と片付けられ、主人の傷を最小限に抑えることができました。身分秩序の「周縁」にいた女性たちだからこそ成立したシステムでした。

誤解2:おならをしたら毎回大声で名乗り出たのか?

芝居やコントでは「ブッ」と鳴った瞬間に「私がいたしました!」と平伏するシーンが描かれますが、実際の現場ではもっと洗練された立ち回りが求められました。 一流の屁負比丘尼は、主人が粗相をした瞬間、わざと茶碗を音を立てて置いたり、激しく咳き込んだりして音をかき消す技術を持っていたと伝えられます。それでも誤魔化しきれない場合に初めて、居合わせた人々に恐縮した表情を見せ、頭を下げてその場を引き受ける。主人の尊厳を傷つけず、場の空気を壊さない「極めて高度な空気を読むスキル」が不可欠だったのです。

橋本 菜々子
著者

橋本 菜々子

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。