現在でこそトップ声優として華々しい活躍を見せる古賀葵ですが、そのキャリアは決して平坦なエリートコースではありませんでした。ネット上では「事務所の強力なバックアップでいきなり売れたのではないか」という誤解が散見されるものの、実際の古賀葵声優経歴と現在を辿ると、過酷な下積みとプレッシャーを実力で撥ね除けてきた現場叩き上げの経歴が見えてきます。
大手事務所である81プロデュース声優一覧に名を連ねる彼女は、佐賀県出身。代々木アニメーション学院福岡校を卒業後、上京して81ACTOR'S STUDIOを経て所属を掴み取りました。デビュー初期の2010年代半ばは、モブ役や「女子生徒」「子供」といった名もなき端役を数多くこなし、オーディションに落ち続ける苦渋の時期を経験しています。公のインタビューや生放送で当時の思い出を振り返る際、彼女は「自分には特徴的な声の武器がないのではないかと思い詰めた時期もあった」と吐露しています。しかし、その「声に変な癖がないこと」こそが、後にどんなキャラクターの器にもなれる最大の強みへと昇華されたのです。
その実力が最も過酷な形で試されたのが、劇場版プリンセスプリンシパルアンジェ役のキャスト交代劇でした。TVアニメ版で圧倒的な支持を集めていた前任声優・今村彩夏の引退に伴い、続編映画『プリンセス・プリンシパル Crown Handler』でのアンジェ役を引き継ぐことが発表された際、ファンの間には大きな動揺が走りました。スパイというハードボイルドな世界観、嘘を吐き続けるクールな主人公という極めて繊細な役柄だけに、交代に対するファンのハードルは天文学的な高さに設定されていたのです。
しかし、劇場公開初日、スクリーンから流れてきた古賀葵演じるアンジェの声は、前任者への深い敬意を保ちながらも、アンジェの内面に潜む孤独と覚悟を完璧にトレースしていました。試写を観たファンからは「違和感がないどころか、魂がそのまま受け継がれている」「どれだけの覚悟と研究を重ねてこのアフレコに臨んだのかが伝わってきて涙が出た」と称賛の嵐が巻き起こりました。既存の固定観念を結果で覆すこの強靭なプロ意識こそ、古賀葵という表現者の真の骨格と言えます。