龍宮殿本館が他のリゾート温浴施設と一線を画すのは、足を踏み入れた瞬間に伝わる建物の品格です。この壮麗な和風建築は、1938年(昭和13年)に浜名湖畔に建てられた高級ホテルが前身となっており、京都・宇治の平等院鳳凰堂を忠実に模して造られました。その後、1957年に現在の芦ノ湖畔へと移築され、2017年にはその意匠と歴史的価値が正式に認められ、文化庁より龍宮殿 国登録有形文化財の歴史に刻まれることとなりました。
釘を極力使わずに組み上げられた格天井や、職人の技巧が光る組子細工、随所に配された銘木は、現代の建築技術では再現困難な重厚感を漂わせています。歴史の息吹を感じながら湯へと向かうアプローチそのものが、精神を鎮める儀式として機能しています。
湯船に注がれるのは、箱根十七湯の中で最も新しい歴史を持つ名湯「蛸川温泉」です。泉質分類としてはカルシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉(弱アルカリ性)に該当します。
専門的な観点から蛸川温泉 龍宮殿 泉質と効能を紐解くと、塩化物成分が皮膚表面に薄い皮膜を形成して水分の蒸発を防ぎ、保温・保湿効果を持続させる「温まりの湯」としての性質を持ちます。さらに硫酸塩泉の働きによって肌の角質を滑らかに整え、動脈硬化予防や慢性皮膚病、神経痛、筋肉痛に対する優れた鎮静効果が期待できます。湯上がり後も芯からポカポカとした温感が長く持続する点は、標高720メートルを超える冷涼な箱根芦ノ湖畔の気候とも見事に合致しています。