向井理のキャリアは、いわゆる「王道の芸能コース」とはまるで異なる。明治大学農学部生命科学科でバイオテクノロジーを専攻し、学会での受賞経験すら持つ理系男子だった。卒業後は飲食の道に進み、渋谷でバーの店長としてシェイカーを振る日々を送っていた。
転機は唐突に訪れた。バーテンダー時代、カルチャー誌の「イケメン特集」にスナップ写真が掲載されたことで、芸能事務所ホリ・エージェンシーのマネージャーの目に留まったのだ。当初は芸能界への興味が薄く、スカウトを固辞していたという逸話も残る。だが、飲食店の開店資金を稼ぐ目的と自身の視野を広げる挑戦として、20代半ばという比較的遅めのスタートで俳優への転身を決断した。
現場経験ゼロからの出発。厳しい演技指導やオーディションに揉まれながらも、理系出身らしい冷静な分析力と泥臭い努力で実力を蓄えていった。この異色の下積み時代こそが、ただの美男子に留まらない骨太な芯を形作ったと言える。