時を経て、この過渡期の空気感そのものを再評価したのがファッション業界だった。ミレニアム前後のデザインは、来たる未来への楽観的な憧れとデジタル世界への好奇心が混ざり合った、極めて過剰でパワフルなエネルギーに溢れていた。
当時のスタイルの骨格を形成したのが2000年代ポップカルチャーの隆盛だ。1999年に公開され世界を震撼させたSF映画『マトリックス』は、漆黒のレザーコートや極細サングラス、重厚なメタル質感を日常のワードローブへと引きずり込んだ。そこに溢れていたのは、どこか影のある近未来的なサイバーパンクの美学だ。一方で、ポップミュージックの現場ではシルバーやホログラム、ネオンカラーといった未来的でプラスチッキーな質感が流行。未来への幻想とミレニアムの興奮がそのまま衣裳や美術へと昇華されていった。