数ある品書きの中でも、圧倒的な支持を集めるのが「穴子天せいろ」だ。主役の十割蕎麦に寄り添う穴子は、毎朝市場から届く極上の活け締め。高温の油で薄衣をまとわせてカラリと揚げられた穴子は、外側が驚くほど軽やかでサクサク、中はふっくらとジューシーで、噛むほどに上質な脂の旨味が広がる。濃厚な旨味の天ぷらと、キリリと辛口のつゆ、そして香気立つ蕎麦が織りなす三位一体の調和は、まさに至福の境地だ。
また、同店では時期に応じて茨城産常陸秋そばや北海道産、福井産など、産地ごとの個性を巧みに引き分けて提供している。産地が異なれば、香りの立ち上がり方や舌触りの滑らかさも微妙に変化する。訪れるたびに異なる蕎麦の表情に出会えることが、何度足を運んでも飽きさせない魔力となっている。