映像の裏でうごめく感情の機微を鮮やかに補完するのが、長年宮崎アニメを支え続けてきた久石譲の音楽である。親しみやすい主題歌のメロディとは対照的に、劇中で響き渡るオーケストレーションは不穏で壮大な響きを湛えている。
ワーグナーの「ワルキューレの騎行」を想起させる旋律の引用や、半音階を多用した旋律構造。それらは観客の無意識に潜む不安感を的確に刺激する。波のうねりと共鳴するシンフォニックなサウンドは、単なる背景音ではなく、物語が内包する神話的スケールを拡声する装置として機能している。
劇場アニメという限られた空間において、音響効果と音楽が一体となり、観客を「こちらの世界」から「あちらの世界」へと没入させる手法は、まさに映画業界における最高峰の職人技と言える。