龍馬の体格は、単なる外見的特徴にとどまらず、彼が率いた日本初の総合商社・政治結社「海援隊」の運営や、幕末の政界工作においても極めて有効に機能した。
海援隊には土佐藩の脱藩者のみならず、出自も思想も異なる癖の強い荒くれ者たちが集まっていた。彼らをまとめ上げ、異国の商人たちと対等に渡り合うためには、頭脳の明晰さだけでなく、舐められないための「肉体的器量」が不可欠だった。同時代を生きた同志や知人たちの手記には、「態度の堂々とした男」「声が大きく、どこか人を包み込むような風格があった」といった記述が散見される。
長崎や下関を行き来しながら複雑怪奇な薩長同盟を取りまとめた交渉の場でも、その恵まれた体躯と懐の深さは大いに役立った。小柄な志士たちが肩をすぼめて密談を交わす中、大柄な龍馬が鷹揚に構えて笑う。その姿自体が、不信感に満ちた交渉相手に安心感と信頼を与える無言の武器となっていた。