さくらももこさんが最初の結婚をしたのは1989年のことでした。お相手は、当時『りぼん』の編集者として彼女の才能をいち早く見出していた宮永正隆氏です。集英社に身を置き、音楽評論家としても鋭い感性を持っていた宮永氏は、作家としての彼女を公私両面で力強く支えるパートナーでした。翌年には長男が誕生し、まさに公私ともに絶頂期を迎えます。
ミリオンセラーを記録した爆笑エッセイ『もものかんづめ』のなかでも、宮永氏はユニークなキャラクターとして度々登場し、読者からも親しまれていました。夫婦二人三脚で生み出すユーモアは、日常をそのままエンターテインメントへと昇華させる彼女の真骨頂でもありました。しかし、創作と私生活の境界線が曖昧になるにつれ、二人の間には少しずつ埋められない溝が生じていきます。
作品の演出方針やマネジメントを巡るすれ違い、そして何より「表現者」と「編集者」という関係性が家庭内に持ち込まれたことによる精神的な負担は、想像以上に大きなものでした。1998年、約9年間にわたる結婚生活にピリオドが打たれます。彼女は息子の親権を引き取り、自らの意志でシングルマザーとして生きる道を選びました。