「病院へ行こう」と決断した際、多くの人が直面するのが「何科に行けばよいのか」という診療科選びの迷いです。指の怪我において、選択を誤ると適切な初期処置を受けられない場合があります。
第一選択は「形成外科」または「整形外科(手の外科)」
傷跡を可能な限り目立たせたくない場合や、細やかな整美を求めるなら形成外科が最適です。形成外科医は顕微鏡や極細の縫合糸(髪の毛よりも細い糸)を用いて真皮縫合を行い、傷跡を最小限に抑える技術に長けています。一方、指の曲げ伸ばしができない、あるいは感覚が麻痺しているなど運動器・神経の障害が疑われる場合は、手の構造を専門とする整形外科(手の外科専門医)の受診が最優先されます。
皮膚科と一般外科の役割
近隣に形成外科がない場合は、一般外科や救急科を受診してください。皮膚科は湿疹や皮膚炎など内科的皮膚疾患の専門であることが多く、クリニックによっては外科的な縫合器具を備えていない場合があります。事前に電話で「包丁の深い切り傷の縫合処置が可能か」を確認することが確実です。
夜間・休日の救急外来受診の目安
夜間や土日祝日に受傷した場合、翌朝まで待つべきか救急外来(ER)へ走るべきかの判断は以下の基準で行います。
- 即座に夜間救急を受診すべきケース:20分以上圧迫しても拍動性の出血が止まらない/指を曲げられない/指先の血色が悪く紫色や蒼白になっている/抗凝固薬(ワーファリン、バイアスピリンなど血液をサラサラにする薬)を服用している。
- 翌朝の受診で間に合うケース:圧迫止血によって完全に出血が止まっており、ガーゼを当てて固定すれば拍動性の激痛がなく、指の感覚や運動に異常がない浅い傷。
また、見落としがちなのが破傷風(はしょうふう)リスクです。破傷風菌は土壌中に広く存在する嫌気性菌です。ごぼう、じゃがいも、レンコンなど泥付き野菜を調理していた包丁で深く切った場合、菌が傷深部に侵入する危険性があります。日本では1968年以降に生まれた世代は小児期の定期接種(3種混合・4種混合ワクチン)を受けていますが、抗体価は10年程度で低下します。成人になってから10年以上追加接種をしていない方は、医療機関で破傷風トキソイドワクチンの接種を受けることが感染予防上強く推奨されます。