則本昂大が抑えへ転向した最大の理由は、長年ブルペンの絶対的支柱だった左腕・松井裕樹のメジャーリーグ移籍でした。サンディエゴ・パドレスへと旅立った松井の穴を誰が埋めるのかという球団最大の懸案事項に対し、当時の首脳陣が導き出した答えが「則本昂大のクローザー配置」でした。
単なる消去法ではありません。アナリストによる投球データの分析からも、彼の抑え適性は極めて高いと評価されていました。先発時代は長い回を投げ抜くために球速や出力配分をコントロールする必要がありましたが、1イニング限定であれば、自己最速158キロを誇るストレートの平均球速を一段引き上げることが可能になります。さらに、カウント球としても決め球としても一級品である鋭いフォークボール、切れ味鋭いスライダーのコンビネーションは、対戦打者にとって極めて脅威となります。
公式戦の投球トラッキングデータを見ても、抑え転向後のストレートの平均球速は152〜154キロ台をコンスタントに記録しており、被打率は大幅に改善しました。短いイニングで全力を出し切るスタイルは、ピンチでギアを上げて三振を奪う本来の持ち味と完全に合致しています。「回の頭からマウンドに立ち、先頭打者を力でねじ伏せる」というシンプルな役割が、マウンドでの闘志をさらに研ぎ澄ませる結果を生み出しました。