せんべろを語る上で避けて通れないのが、東西に点在する「酒場の聖地」です。東京を代表する二大巨頭といえば、北区の赤羽と台東区の上野・御徒町エリアでしょう。
赤羽の一番街周辺には、朝から湯気を立てるおでん種の名店や、うなぎの蒲焼き・川魚をつまみに昼前からコップ酒をあおる光景が日常として残っています。一方の上野・アメ横高架下エリアは、もつ焼き店やガード下の立ち飲み店が軒を連ね、多国籍な熱気と昭和の情緒が混ざり合う独特の磁場を放っています。大阪に目を向ければ、西成・新世界や京橋、天満といったディープなエリアが、串カツやどて焼きとともに圧倒的なコストパフォーマンスを競い合ってきました。
こうした聖地で近年際立っているのが、「昼飲み店舗」の賑わいです。かつては夜勤明けの労働者や引退した年配層の特権とされていた昼酒ですが、働き方の多様化やフレックスタイムの浸透、さらには休日のタイパ重視のレジャー需要を取り込み、客層は劇的に広がりました。
現場のカウンターに立つ店主は、近年の変化について次のように語ります。
「昔は昼間から飲んでいると後ろ指を指されるような空気もあったけれど、今はまったく違う。土日の14時台なんて、20代のカップルや一人旅の旅行客で満席ですよ。みんな長居はせず、さっと2杯飲んで次のお店へ流れていく。お酒の楽しみ方がすごく軽やかになりましたね」(上野ガード下の老舗立ち飲み店・店主談)
酒屋の一角で店内の酒をそのまま飲む「角打ち(かくうち)」も、歴史ある木造建築の風情や、店主が厳選した地酒を原価に近い価格で楽しめるサードプレイスとして、若い世代や外国人観光客からも熱烈な注目を集めています。