本作の最大の黒幕は、実体を失ったヴォルデモート卿その人ではなく、16歳の彼自身の記憶と魂を定着させた「トム・マールヴォロ・リドルの日記」でした。この日記は単なる魔法の道具ではなく、シリーズ後半の第6作『謎のプリンス』以降で明かされるヴォルデモートの「分霊箱(ホークラックス)」の第1号です。
純血主義者ルシウス・マルフォイは、アーサー・ウィーズリーを失脚させる謀略として、ダイアゴン横丁の書店でジニーの鍋にこの日記を密かに滑り込ませました。孤独だったジニーは日記に悩みを書き連ねるうちにリドルに心を支配され、意識を失った状態で壁に血文字を書き、鶏を殺し、秘密の部屋の扉を開けさせられていたのです。
マルフォイ家の屋敷しもべ妖精であったドビーは、主人の危険な企みを知り、ハリーを死の危険から遠ざけるために暴走とも言える過激な妨害工作(ホグワーツ特急の柵の封鎖、暴れ柳への衝突、ブラッジャーの暴走)を行っていました。結末においてハリーは、日記の中に隠した自身の靴下をルシウス経由でドビーに拾わせる機転を利かせ、彼を長年の奴隷契約から解放することに成功します。
なお、防衛術の教授として着任したギルデロイ・ロックハートは、他人の偉業を奪い取っては「忘却術(オブリビエイト)」で口封じをしてきたペテン師でした。秘密の部屋の前でハリーとロンに記憶消去を試みますが、テープで補修されていたロンの折れた杖がバックファイアを引き起こし、自らの記憶を完全に失うという因果応報の結末を迎えています。