現地を訪れると、写真や図面では決して味わえない「木造建築の息づかい」と「空間のゆがみ」を体感することになります。
飯盛山の石段を登り(またはスロープコンベアを利用)、鬱蒼とした木立を抜けると、異様な存在感を放つさざえ堂が姿を現します。見学者が見逃してはならない鑑賞ポイントは以下の3点です。
1. 柱と梁の傾斜と「木造のねじれ」
堂内に入ると、床だけでなく周囲の柱や手すり、天井の梁までもが螺旋の傾斜角に合わせて複雑に傾けられています。まっすぐな柱が1本もないような錯覚に陥り、平衡感覚が狂う独特の浮遊感を覚えます。木造でありながら滑らかな曲面と勾配を成立させている継手(つぎて)・仕口(しぐち)の狂いのなさは、木造建築技術の極致です。
2. 最頂部の「太鼓橋」と天井に貼られた無数の千社札
上りスロープの終点に位置する太鼓橋の真上を見上げると、六角形の中心天井が見えます。ここには江戸時代から昭和初期にかけて参拝者が貼り残した無数の「千社札(せんじゃふだ)」がびっしりと残されており、庶民の信仰の熱狂を視覚的に物語っています。
3. 外観の唐破風(からはふ)彫刻と竜の彫り物
内部の構造に目を奪われがちですが、正面入口上部の唐破風に施された精緻な竜の丸彫り彫刻や、幾重にも重なる六角屋根の優美なラインも見事です。貝殻の「サザエ」に酷似した特異なシルエットは、見る角度によってまったく異なる表情を見せます。