ジト目の意味を紐解く上で欠かせないのが、日本語特有のオノマトペです。語源となったのは、相手を疑わしげに見つめたり湿り気を帯びた視線を向けたりする際の擬態語「じとーっ」「じっと」であり、これに身体部位の「目」が結合して成立した俗語とされています。三省堂等の一般国語辞典に独立した見出し語として掲載される例はまだ稀ですが、Weblio辞書などのオンライン言説空間やWikipedia、ピクシブ百科事典では既に独自の感情表現記号として詳細に体系化されています。
明確な学術的定義こそ存在しないものの、作劇やイラストレーションにおいて共通認識となっているのは「不信」「呆れ」「軽蔑」という3大感情の表出です。怒りのように激しく燃え上がる炎の感情ではなく、体温がスッと下がったかのような平熱以下のリアクションとして描かれる点にジト目の本質が存在します。
では、なぜ冷淡な蔑視視線がこれほどまでに愛好されるのでしょうか。ジト目が可愛い理由の核にあるのは、「飾らない素の感情が自分だけに向けられている」という特権的親密さです。人間は社会生活において、初対面の相手や利害関係者に対して愛想笑いや礼儀正しい表情を取り繕います。しかし、ジト目はそうした外面のフィルターが完全に剥ぎ取られた状態でのみ発動します。ツンデレ蔑み視線が刺さる愛好家にとって、冷たい視線は拒絶ではなく「自分に対して警戒を解き、感情の防壁を外してくれた証」として知覚されるのです。