『花と竜』の伝説は、レコード盤の中だけに留まりませんでした。火野葦平の原作小説は、その劇的な物語性から幾度となく映像化され、藤田進、石原裕次郎、中村錦之助(後の萬屋錦之介)、渡哲也、高倉健といった錚々たる大スターが玉井金五郎を演じてきました。その中で、村田英雄が歌う花と竜 主題歌は、作品の世界観を決定づける唯一無二のアンセムとして映画史に刻み込まれています。
特に1965年から1966年にかけて山下耕作監督がメガホンをとった東映版『花と竜』『続・花と竜』では、主演の中村錦之助が魅せる壮絶な立ち回りと、劇中に鳴り響く村田英雄の圧倒的な歌声が見事な相乗効果を生み出しました。さらに村田自身も、東映任侠映画や現代劇において数々の映画出演を果たしており、スクリーンの中で放つ強烈な眼光と威風堂々たる存在感は、本職の俳優陣をも圧倒する凄みを帯びていました。
関係者の回想録によると、当時の撮影現場で村田英雄が見せた立ち振る舞いは、まさに玉井金五郎そのものであったと伝えられています。後輩俳優や現場の裏方スタッフに対する細やかな気配りを欠かさず、一度カメラが回れば「川筋の荒くれ者」の迫真のリア乱を全身で表現する村田の姿に、映画関係者たちも深い敬意を抱いたといいます。映画の主題歌として銀幕に流れる村田の歌唱は、過酷な運命に立ち向かう登場人物たちの血の叫びを代弁し、映画館を埋め尽くした観客の涙を絞り取りました。