スエズ運河の通行料収入の急減は、単なる一企業の減収にとどまらず、エジプト・アラブ共和国の国家経済そのものを揺るがす深刻な危機へと発展しました。
エジプトは深刻な外貨不足と累積対外債務に悩まされており、輸入に依存する小麦や燃料の支払いに必要なドルを運河収入に大きく頼っていました。そのドル供給源が半減したことで、エジプトポンドの通貨価値は大幅に下落。国内では急激なインフレーションが進行し、国民生活に直接的な打撃を与えました。
エジプト政府は国際通貨基金(IMF)からの支援枠拡大や、アラブ首長国連邦(UAE)をはじめとする中東産油国からの巨額投資受け入れによって当面のデフォルト危機を回避したものの、「スエズ運河という一本足打法」が内包する地政学的脆弱性が白日の下にさらされる結果となりました。