実際に組織の幕を引いた現場では、どのようなプロセスを踏んでいるのでしょうか。小学校PTA廃止の事例として注目を集めた、関東近郊のベッドタウンに位置する公立B小学校(児童数約650名)の軌跡を取材しました。
B小学校では、2024年度に就任した本部役員が、長年形式化していた総会の委任状集めや役員逃れの対立に強い疑問を抱いたことが発端でした。本部が主導し、教員と共同で「1年間の実態棚卸しプロジェクト」を発足。まず着手したのは、全保護者と教職員を対象にした記名・無記名併用のアンケート調査でした。
結果は明白で、保護者の82%が「組織の解体または抜本的改革」を要望。これを受け、本部は以下のようなPTA解散手続きの流れを整然と進めました。
- PTA任意加入の周知徹底と現状課題の共有:保護者会で「法的にPTAは任意加入であること」を公式にアナウンスし、これまでの強制慣習を謝罪・清算。
- 解散検討委員会の設置:規約に基づき、解散発議のためのワーキンググループを組成。業務の要不要を徹底的に仕分け(全体の約6割の業務が即時廃止対象に決定)。
- 残余財産の清算計画立案:数十年にわたり蓄積されたPTA会費の繰越金(約300万円)について、校内冷水器の増設や図書室の児童書購入、テント新調など、全児童に公平に還元する用途を策定。
- 臨時総会での解散決議:会則に定められた出席者および委任状を含む「総会員の3分の2以上の賛成」という要件をクリア(賛成率は91.4%)。正式に解散が成立。
- 新体制(学校支援ボランティアグループ)の立ち上げ:必要な時だけLINEオープンチャットで有志を募る緩やかなネットワークへと改組。
「手続きで最も神経を使ったのは残余財産の処理でした。保護者から集めたお金をどう全校児童に還元するか、教育委員会や監査担当の弁護士とも綿密に相談を重ねました。解散届が受理された総会の夜、役員全員で肩の荷が下りたと抱き合いました」(B小学校元PTA副会長の回顧)