観光情報サイトやSNSのタイムラインにおいて、室生寺に対して抱かれがちな最大の誤解は、「室生寺は4月のシャクナゲを見に行けば十分であり、初夏はオフシーズンである」という先入観です。
確かに約3,000株のシャクナゲが咲き誇る春の光景は壮観ですが、その時期は境内が凄まじい混雑に見舞われ、女人高野本来の魅力である「静寂と祈りの気配」を体感することは困難を極めます。一方、あじさいの時期は、長谷寺に多くの観光客が集中するため、室生寺境内には適度な静けさが保たれます。自然石の階段を自らの足音を踏みしめながら登り、葉先から滴る雨音と鳥のさえずりに耳を澄ます体験は、初夏にしか味わえない贅沢です。
また、「長谷寺と室生寺は隣り合っているからすぐ移動できる」という安易な見積もりも禁物です。電車とバスを乗り継ぐ場合、待ち時間を含めると移動だけで片道40分から1時間を要します。さらに室生寺の五重塔から先の「奥の院」へ向かうには、700段を超える険しい石段を踏破しなければなりません。「軽い気持ちでサンダルで訪れてしまい、途中で登攀を断念した」という失敗談は後を絶ちません。山の気象は変わりやすく、急な降雨で石段が濡れると極めて滑りやすくなるため、滑りにくい靴選びと雨具の持参は必須の心得です。