現地を訪れた旅行者が口を揃えて漏らすのが、「絶景よりも階段のきつさに圧倒された」という悲鳴にも似た感想です。鋸山の日本寺境内は、岩山を削り出して造られた神聖な霊場であり、その敷地面積は約33万平方メートル(東京ドーム約7個分)にも及びます。境内全域には約2,600段もの不揃いな石段が張り巡らされています。
特にロープウェー山頂駅から地獄のぞき、そして後述する「百尺観音」や「日本寺大仏」を結ぶ動線は、激しいアップダウンの連続です。整備された歩道橋のような等間隔の階段ではなく、江戸時代の石切り技術で切り出された古い石や、自然の岩肌を削った段差が続くため、1段ごとの高さが30センチ近くある場所も珍しくありません。足腰にかかる負荷は一般的なビル階段の昇降以上です。
ここで命運を分けるのが「足元の装備」です。観光気分で訪れた人の中には、サンダルやパンプス、革靴、厚底スニーカーで足を踏み入れ、途中で立ち往生してしまうケースが後を絶ちません。雨上がりや朝露が残る時間帯は、苔が生えた凝灰岩の表面が極めて滑りやすくなり、転倒による打撲や捻挫のリスクが跳ね上がります。
現地取材から導き出した、絶対に後悔しない装備の鉄則は以下の通りです。
- シューズ:グリップ力の高いスニーカー、もしくはローカットのトレッキングシューズが一択。靴底の溝がすり減ったスニーカーやスリッポンは厳禁です。
- 服装:伸縮性のあるパンツスタイル(ストレッチ素材のチノパン、デニム、登山用パンツ)。スカートは足元が見えにくいうえ、吹き上げる突風でめくれる危険性があります。
- バッグ:両手が完全に自由になるリュックサックやボディバッグ。階段の手すりを掴んだり、万が一バランスを崩した際に受け身を取れる状態を確保してください。
- 水分補給:境内は広く、夏場はもちろん春・秋でも階段の昇降で大量の汗をかきます。山頂駅や売店で必ず500ml以上の飲料水を確保してから境内に入りましょう。