ネット上で「パンサー不仲説」が長年にわたり検索され続ける背景には、火のない所に煙は立たないと言わしめる決定的な歴史が存在します。結成初期から中盤にかけて、尾形貴弘と向井慧の間には、テレビ用の演出を超えた本物の軋轢が生じていました。
最大の要因となったのは、2010年代前半に巻き起こったパンサーのアイドル的人気と、トリオ内の圧倒的な作業負担の偏りです。当時、ネタ作りとトリオの進行役を一手に担っていた向井は、世間から「顔だけのアイドル芸人」「中身がない」と揶揄されるプレッシャーに一人で耐え忍んでいました。一方、尾形は最年長でありながらネタ作りにノータッチで、感情の赴くままに暴れる直情型スタイル。ネタの質を重んじる向井からすれば、尾形の舞台上でのミスやアドリブ暴走は許容しがたいストレス源となっていたのです。
当時の様子について、向井は後にラジオ番組『#むかいの喋り方』や『パンサー向井の#ふらっと』などで赤裸々に回顧しています。「当時は尾形さんのやることなすこと全てが嫌で仕方がなかった」「楽屋でも全く口を利かない時期が数年間続いていた」と告白。当時の尾形に対するダメ出しは日に日に苛烈を極め、尾形自身も「向井が怖くて自分の意見が何も言えなかった」「毎日向井の顔色ばかり伺っていた」と当時の特番で吐露しています。この心理的プレッシャーから、尾形は精神的に追い詰められ、トリオ脱退や芸人引退を真剣に考えるほどの劣等感を抱えていました。
この歪んだパワーバランスが白日の下に晒されたのが、『ゴッドタン』(テレビ東京系)の看板企画「腐り芸人セラピー」でした。向井は番組内で、キラキラした人気者の仮面をかなぐり捨て、尾形の無反省な振る舞いや、現状に甘んじるトリオの構造に対する鬱屈とした怒りを爆発させました。また『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「トリオ芸人の立ち位置」企画でも、向井・菅・尾形の間に横たわる温度差がリアルに可視化され、視聴者に「パンサーは本当に仲が悪い」という強烈な印象を植え付ける決定打となったのです。