生まれて間もない新生児は、自らの意思で手足を動かす「随意運動」を行う大脳皮質がまだ成熟していません。その代わりに、過酷な胎外環境に適応して生き抜くために備わっている生来のプログラムが「原始反射」です。脳幹や脊髄などの古い神経系によって無意識に引き起こされる不随意運動であり、赤ちゃんの神経系が正常に機能しているかを測る重要なバロメーターとなっています。
なかでも自動歩行反射(Automatic Stepping Reflex)は、赤ちゃんの胸から脇の下を支えて直立させ、足の裏を硬い平面に接触させて体をわずかに前傾させた際、下肢が交互に屈曲・伸展を繰り返して前進するように動く現象を指します。赤ちゃんの原始反射における2026年現在の小児神経生理学の見解では、このリズミカルな歩行様運動は、脊髄内に存在する局所的神経回路「中枢パターン生成器(CPG:Central Pattern Generator)」が刺激に反応して引き起こす現象であると整理されています。
「まだ首もすわっておらず、立つ筋力すらない新生児が歩行の基本パターンをすでに持っている」という事実は、人類が直立二足歩行を獲得してきた進化の記憶を物語っています。自分の意思で歩いているのではなく、足底からの皮膚刺激と固有受容感覚が引き金となって反射弓が作動している状態です。