日本全国に8つ存在する内陸県(海なし県)の中でも、埼玉県民の海産物に対する憧憬と要求水準の高さは際立っています。そうした市場心理を的確に捉えた屋号が「埼玉漁港」ですが、これは単なる奇抜なキャッチコピーではありません。運営元である株式会社そうまが長年培ってきた流通イノベーションの結晶です。
最大の強みは、静岡県駿河湾に位置する沼津港直送鮮魚のバイパスルートを確立している点にあります。自社の専属バイヤーが毎朝沼津魚市場のセリ場に立ち、その日の朝に水揚げされたばかりの鮮魚を目利きして直接落札。自社便の保冷トラックに積み込み、東名高速から圏央道を経由してわずか数時間で埼玉県内の各店舗厨房へと運び込みます。仲卸や東京の中央卸売市場を経由する一般的な多段階マージンをカットすることで、競合チェーンを圧倒する原価率(推定45〜50%超)を客皿へ還元する仕組みを構築しました。
「埼玉に港がないのなら、自分たちで海から魚を直結させてしまえばいい」という逆転の発想こそが、埼玉漁港の看板に込められた真意です。朝獲れのシラスや地魚、脂の乗った大衆魚が昼の営業時間にはすでに刺身として供されるスピード感は、臨海部の観光地にある海鮮食堂と比較しても一切引けを取りません。