本作のメガホンをとった福田雄一監督といえば、アドリブ満載のユーモアと独特の間合いで知られるヒットメーカーだ。しかし、このエピソードにおいて監督は、中村倫也に対して徹底して「笑い」を封印させた。
福田組の常連でもあった中村だからこそ、その信頼関係は強固だった。「絶対にふざけない、本物の異物としてそこにいてほしい」という演出意図を完璧に汲み取った中村は、画面内のコメディ調の空気を一瞬で凍りつかせるスパイスとして機能した。福田ワールド特有の明るい世界観の中に、容赦のないリアルな毒を投入することで、物語の起伏と主人公たちのヒーロー性が鮮やかに際立ったのだ。