関東のすっきりとした辛口醤油に慣れた旅行者が、ヒシミツ醤油を口にして驚くのがそのまろやかな「甘み」だ。歴史的に九州は、江戸時代に長崎の出島を通じて輸入された砂糖が入手しやすい環境にあった。また、脂の乗った沿岸部の魚介類や熱帯に近い温暖な気候に合わせて、濃厚で甘みのある醤油が進化してきた背景がある。
だが、ヒシミツ醤油の甘みは単なる砂糖の甘さではない。アミノ酸を豊富に含んだ大豆の旨味と、伝統の製法で長期熟成されたモロミ由来の複雑な甘みが重なり合っている。化学調味料に頼らず、熟成の過程で生み出される自然な甘味成分が、素材の引き立て役として完璧なバランスを保っているのだ。