現在流通している弓道の弦には、天然素材の「麻弦」と、ケブラーやザイロン、ダイニーマなどの化学繊維を用いた「合成弦」の2種類があります。素材によって繊維の摩擦特性が大きく異なるため、弦輪の扱いにも工夫が求められます。
合成弦は耐久性に優れ切れにくい反面、繊維の表面が非常に滑らかです。そのため、結び目を手で締めただけでは滑って抜けるリスクがあります。合成弦で月の輪を作る際は、結び目の折り返し部分を指先で強く押しつぶすように圧着させ、摩擦を最大限に効かせることが重要です。
一方の麻弦は、天然の繊維が互いに噛み合うため一度結ぶと解けにくい特性を持っていますが、乾燥に弱く急激な折り曲げで繊維が断裂する危険があります。麻弦を結ぶ際は、あらかじめ「くすね(松脂と油を練り合わせたもの)」を結び目周辺に塗り込み、摩擦熱でなじませてから結ぶと強度と耐久性が劇的に向上します。
また、弦輪が完成したら弓に張り、弦高(握り革の内側から弦までの距離)を測定します。標準的な弦高は約15cm(五寸前後)です。弦高が高すぎる場合は月の輪を小さく(弦を長く)作り直し、低すぎる場合は弦を数回撚って調整するか、月の輪をわずかに大きくして適正位置に合わせます。