イシモチの美味しい食べ方を語るうえで外せない、プロの厨房で実践されている王道かつ実践的な5つの技法とレシピをご紹介します。
1. 洗練された甘みを味わう「イシモチの刺身」と「イシモチの昆布締め」
釣れたて当日、または鮮軍極上の個体が手に入ったならば、まずは刺身を試すべきです。しっかりと脱水処理を施したサクを、皮目をバーナーで炙った「焼き霜造り」にするのが最もおすすめの食べ方。皮下脂肪の香ばしさと身の甘みが絶妙なハーモニーを奏でます。
さらに評価が高いのが「イシモチの昆布締め」です。薄く塩をあてて余分な水分を抜いたフィレを、日本酒で湿らせた昆布で包み、ラップをして冷蔵庫で約4時間寝かせます。昆布の不乾性成分と植物性アミノ酸がイシモチの繊維に浸透し、ねっとりと上品な舌触りと芳醇な旨味が舌の上に長く留まります。
2. 脂の甘みと香ばしさを凝縮する「イシモチの塩焼き」
イシモチの代名詞とも言える料理が塩焼きです。古くから沿岸部諸国では「イシモチの嫁御料(塩で締めると見違えるように良くなる魚)」と形容されてきました。美味しく仕上げる極意は「一塩干し」の工程にあります。下処理後に塩を振り、冷蔵庫内でラップをかけずに半日ほど風乾させて表面に薄いタンパク質の被膜を作ります。この状態から中火でじっくり焼き上げることで、内部のジューシーな脂を閉じ込めつつ、皮はパリッと、身はしっとりと芳醇に仕上がります。
3. 頭から尾まで味わい尽くす「イシモチの唐揚げ」と「イシモチの骨せんべい」
少し小ぶりな個体や、水っぽさがどうしても気になる個体に最適なのが揚げ物のアプローチです。三枚おろしにした身に塩・コショウと薄口しょうゆ、おろし生姜を軽くなじませ、片栗粉を薄くまぶして175℃前後の油でカラッと揚げます。身の内部にある水分が瞬時に蒸気となって衣を押し広げるため、フリットのような極上の「外サク中フワ」食感が完成します。
中骨部分は捨ててはいけません。血合いを洗って酒気を拭き取った背骨を、電子レンジに600Wで1分半かけて余分な水分を飛ばしてから、160℃の低温油で泡が小さくなるまでじっくり揚げれば、極上の「イシモチの骨せんべい」になります。スナック感覚で香ばしく、お酒のお供にも最適です。
4. ふっくら柔らかな身質を堪能する「イシモチの煮付け」
煮魚にする際は、身崩れを防ぐための下準備が光ります。霜降り(熱湯を回しかけて冷水に落とし、表面のヌメリを取る)を行った後、酒・みりん・濃口しょうゆ・生姜薄切りを合わせた煮汁をあらかじめ強火で沸騰させます。沸騰した中にイシモチを投入し、落とし蓋をして中火から強火で一気に短時間(約8〜10分)で炊き上げます。長時間煮込むと水分が抜けてパサつくため、「煮含める」のではなく「強火の煮汁をかけながら短時間で火を通す」のがふっくら仕上げる鉄則です。
5. 地中海風の出汁の相乗効果「イシモチのアクアパッツァ」
現代の食卓で絶大な支持を集めているのが「イシモチのアクアパッツァ」です。イシモチは自己主張が強すぎない上品な白身であるため、ドライトマト、オリーブ、ケッパー、そしてアサリなどの貝類から出る濃密な出汁をスポンジのように吸い込みます。フライパンにオリーブオイルと潰しニンニクを熱し、イシモチの両面を焼き固めたら、アサリと白ワインを加えてフタをし強火で乳化させます。オリーブオイルと水分が混ざり合った白濁スープをたっぷり吸ったイシモチの身は、レストラン級の満足度を誇ります。