なぜ、あれほど慎重で理知的な二人が衝動的なキスに至ったのか。その発端となったのが、ファンの間で語り草となっている「カエル」をめぐる攻防劇です。
物語初期から、猫猫は壬氏を「後宮を統括する宦官」として認識していました。しかし壬氏の真の正体は、現帝の弟とされる皇弟(実質的な皇位継承者候補)であり、去勢された宦官などではありません。薬や毒、人体の構造に異常なほど詳しい猫猫は、とある事件と状況のなかで、壬氏が「完全な男性である証拠(隠語としてのカエル)」を物理的・視覚的に突き止めてしまいます。
長年にわたり隠し通してきた最大の欺瞞を猫猫に握られた壬氏は、自らの弱みを突かれ、かつてないほど動揺します。同時に、どんなに美しい容貌で迫っても毛虫を見るような目でしか自分を見なかった猫猫が、己の「男としての実体」を直視した瞬間でもありました。
取り繕った仮面を剥ぎ取られた壬氏は、猫猫を力づくで組み敷くような形で迫り、自身の存在をこれ以上ないほど生々しく刻みつけるように口づけを奪います。それは単なる甘いロマンスではなく、「もう宦官という都合のいい壁に逃げ隠れさせない」という壬氏の激しい自己主張であり、主従という安全圏に留まろうとする猫猫への強烈な宣戦布告でした。