記念すべき第1作『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』でメガホンをとったまんきゅう監督の手腕は、まさに職人技と呼ぶにふさわしい。絵本の中に吸い込まれたすみっコたちが出会う、自分が何者かを知らない「ひよこ?」。この名もなき存在のアイデンティティをめぐる旅路は、童話のパロディを装いながら、容赦のない存在論的問いを投げかける。
物語の随所に散りばめられた小さな違和感や伏線が、ラスト数分で一気に収束する構成の妙。キャラクターが言葉を発しないという制約を逆手に取り、表情の揺らぎや間(ま)の取り方だけで感情の機微を語り尽くす。絵本の白紙ページに残された温かい筆跡を見たとき、大人が声を押し殺して泣く理由はそこにある。