英語の「fake」は本来、偽物、模造品、あるいはペテンやでっち上げを意味する単語です。しかし、現在のデジタル空間におけるフェイクとは、単なる偽グッズや悪ふざけの域をはるかに脱し、社会インフラを脅かす深刻なリスクファクターとして定義されています。総務省や国際的なファクトチェック機関の整理に基づくと、現代のフェイクは大きく次の3形態に分類されます。
第1に、意図的に害を与える目的で作成・拡散される「ディスインフォメーション(悪意ある偽情報)」。これには政治工作や株価操作、著名人を騙った投資詐欺広告などが該当します。第2に、発信者自身が悪意を持たず、事実だと信じ込んで拡散してしまう「ミスインフォメーション(誤情報)」。災害時の善意による不確かな救助要請の拡散がその典型です。そして第3に、事実は一部含んでいるものの、文脈を切り貼りして特定の人物や団体を貶める「マルインフォメーション(悪意ある事実の改変・悪用)」です。
取材の現場で痛感するのは、人々の関心を集めて収益化を図る「アテンション・エコノミー」の暴走です。再生回数やインプレッションがお金に換算されるプラットフォームの仕組みが、より過激で感情を刺激するフェイクの製造を強力に後押ししています。もはやフェイクとは偶発的な嘘ではなく、精緻に設計されたビジネスモデルであり心理兵器であるという認識を持つ必要があります。