音楽シーンにおいても大きな地殻変動が起きている。今夏から秋にかけてチャートの上位を占めたのは、キャッチーなサビを持つポップスではなく、環境音や歪んだ合成音を組み合わせた「アンビエント・ノスタルジア」と呼ばれるジャンルだ。
遠くで響く遠雷の音、蝉の最後の羽音、クーラーの室外機が吐き出す低音のノイズ。こうした日常の音像を拾い上げたサウンドトラックが、疲弊した都市生活者のメンタルケアとして聴き込まれている。耳を澄ませばそこに、二度と帰らぬあの日の夕暮れが立ち現れる。音の波間に漂う哀愁が、人々の孤独をそっと包み込んでいる。