寺の伝承を深く紐解くと、古代から近世に至る日本史の二大巨頭の名が浮かび上がる。まず伝わるのは、若き日の弘法大師 空海がこの地で修験の旅の途中に秘法を修めたという伝説だ。境内裏手にひっそりと佇む古井戸は、空海が湧出させたとの言い伝えがあり、今なお枯れることなく清らかな水を湛えている。
さらに時代が下り、関ヶ原の戦いを前にした徳川家康が戦勝祈願に訪れたという古文書の存在も見逃せない。昨今、NHK大河ドラマの影響で戦国武将たちの信仰心や精神構造にスポットが当てられる機会が増えたが、家康が寄進したと伝わる直筆の書状や祈願文は、まさに時代の転換点を目撃した生々しい証言と言える。表舞台の歴史には残りにくいこうした境内の秘話こそが、訪れる者の探求心を刺激してやまない。