インターネット上の掲示板や園芸コミュニティでは、「炭疽病にかかった苗を農薬で復活させる方法」「黒い斑点を切り取れば治る」といった情報が散見されます。しかし、結論から言えば、一度クラウンまで感染したイチゴ炭疽病に有効な治療法は存在しません。
組織内に菌糸を伸ばした病原菌は、植物の維管束を破壊し、水分の吸い上げを物理的・化学的に遮断します。現在流通しているいかなるイチゴ炭疽病の有効農薬であっても、壊死した維管束を再生させる魔法の薬はありません。「治療」を謳って高価な薬剤や活力剤を投与し続けている間に、水滴を通じて周囲の健全な苗へと二次感染が急速に拡大していきます。発病株を見つけた場合の唯一無二の「治し方」は、見つけ次第ただちに株ごと根こそぎ抜き取り、育苗圃場の外へ持ち出して完全密封・焼却処分することです。
また、家庭菜園におけるイチゴ病気見分け方にも多くの誤認が存在します。夏場にイチゴが萎れる原因は炭疽病だけではありません。以下の特徴を頭に入れて診断することが不可欠です。
- 炭疽病:葉柄やランナーに黒い窪み斑点が出る。新葉が萎縮・黒変する。クラウン断面を切ると赤褐色〜暗褐色の乾性腐敗が見られる。
- 萎黄病(いおうびょう):新葉の1〜2枚が奇形化して「三出複葉の小葉の大きさが不揃い」になり、黄化する。クラウン断面の導管部が黒褐色に細いリング状に変色する。
- 疫病(えきびょう):過湿土壌で多発。株全体が急速に青枯れし、クラウン部が水浸状の軟腐症状を示して独特の悪臭を放つことがある。
これらを混同して誤った薬剤を散布しても効果は得られません。葉の斑点の形状と、犠牲を覚悟で1株切断してクラウン内部の状態を確認することが、早期見極めの絶対基準です。